人生に必要なことは草や昆虫や?に教えられた

日々の「あれ!おや?」から、人生の指針を紡いできた観察日記です。

幸せな音

再公開記事

この作品は、

エッセイ講座の課題作品に出した作品です。
横浜には、NHK文化センター、朝日と読売カルチャー
がありますので、好みの講座をみつけて参加してます。
今のところはコロナで行けてませんが、落ち着いたら
行こうと思います。刺激になっていいですね。

 

「幸せな音」


可愛いなあと、心がつぶやいた。

たった一つの小さな音から幸せになることも

出来る。隣に二歳になる男の子がいるが、

その子が毎朝7時ごろになると、きゅきゅきゅ~と

靴の音を鳴らして出かけていく。

そして、夕方の4時頃には必ず帰ってくる。
きゅきゅきゅ~と可愛い音を出して。

何時も家内と「おお、帰ってきたねえ~」

と想いの「お帰りなさい」を言う。
本当に毎日版で押したように、朝と夕方に。

「きゅ、きゅ、きゅ」と、
この音を聞くたびに、何となく幸せな気持ちが

湧いてくる。

なぜ?・・・私の子供がやはり二歳の頃、

同じように音の出る靴を履いていたからだ。

そして、子供をとても可愛く思い、愛していた

からだと思う。今は、その子供達も独立してし

まって生活を共にしていないから、よけいに

親愛の情がわいてくるのだろう。
心の隙間を埋めてくれているのかもしれない。
子供=愛している=可愛い=子供の靴の音
=可愛い=幸せの音=感じる、

つまりこの音が、

いい音、幸せな音というように、心の引き出しに

あるからではないのだろうか。
だから隣の子供の靴音が、私達夫婦の昔の幸せの

音の引き出しを開けてくれるのだろう。
そこからじわ~っといい感じが波のように寄せて

くるのだ。それが、金曜日からピタッと聞こえて

こなくなった。
(どうしたんだろう・・・)
「多分家族でお出かけしたんだね、しかし、

きゅきゅきゅが聞こえないと寂しいね」
こんな会話がその子に聞こえているといいのだが?

小さな、小さな、こんな音からも幸せになれることに、

認識をあらたにした。


「幸せの音、心の引き出しに、幾つあるんだろう?

 もうすぐ夏、
 縁側で母に抱かれた耳元に風鈴の音があった、
チンチロリン・・・と、時々思い出そう、

        幸せな音を」